変更登記の実務|役員変更

取締役が亡くなった|チャートで分かる、登記とそろえる書類

代表取締役だった父が亡くなりました。登記は何をすればよいですか?

先月、父が亡くなりました。父が代表取締役で、取締役は父と私と母の3人です。会社の実印も父の名前で届けてあります。銀行から会社の登記事項証明書を出すように言われていますが、相続のほうも途中で、順番が分かりません。父の名義の株式をどうするかも、まだ決まっていません。

相続のお手続きがまとまる前でも、会社の登記だけ先に終わらせられます

取締役が亡くなると、その日に退任します。会社と取締役の関係は委任なので、亡くなった時点で終わります。取締役の地位は、ご遺族に相続されません。ですから、遺産分割の話がまとまるのを待たずに、会社の登記だけ先に進められます。

株式の相続は、これとは別のお話です。お父さまの名義の株式をどなたが引き継ぐかが決まっていなくても、取締役が亡くなったことの登記はできます。

会社にあてた死亡届を一通いただければ、登記は進められます。相続のお手続きで戸籍や法定相続情報一覧図の写しをすでにお取りでしたら、そちらをお送りいただくだけでかまいません。どれが使えるかは、司法書士が見ます。

登記の期限は、亡くなった日から2週間です(役員変更登記の期限)。何か月かたっていても、そこから申請できます。

登記簿には、取締役と代表取締役の両方に死亡が登記されます

代表取締役だった方が亡くなると、取締役の欄と代表取締役の欄の両方に、亡くなったことが登記されます。新しい代表取締役は、そのあとに登記されます。

架空の登記例代表取締役だった方が亡くなったあとの、役員の欄

取締役3人の会社で、代表取締役だったA野B男が亡くなり、取締役だったA野C男が新しい代表取締役になった場合です。

役員に関する事項

資格・氏名(代表取締役は住所も)原因年月日・登記年月日
取締役 A野 C男令和3年6月25日重任 令和3年7月2日登記
取締役 A野 D子令和3年6月25日重任 令和3年7月2日登記
取締役 A野 B男令和3年6月25日重任 令和3年7月2日登記 令和8年8月20日死亡 令和8年9月3日登記
埼玉県さいたま市浦和区高砂○丁目○番○号 代表取締役 A野 B男令和3年6月25日重任 令和3年7月2日登記 令和8年8月20日死亡 令和8年9月3日登記
埼玉県さいたま市浦和区常盤○丁目○番○号 代表取締役 A野 C男令和8年8月31日就任 令和8年9月3日登記
死亡の原因年月日は、どちらも亡くなった日です。新しい代表取締役の就任は、選んだ日で登記されます。

亡くなったのが代表取締役かどうかで、進め方が大きく変わります。司法書士は、そこから見ます。

  • 亡くなった方の役職代表取締役だった会社では、新しい代表取締役を選び、会社の実印も届け出直します。取締役だけだった場合は、死亡の登記で済むことがあります。
  • 残った取締役の人数と、会社の形取締役会のある会社は3人以上、ない会社は1人いれば構いません。定款でこれより多く決めている会社もあります。どれに当たるかは、登記簿と定款を取って司法書士が見ます。
  • 株主の顔ぶれ後任の取締役を選ぶには株主総会が要ります。お父さまの株式の相続が決まっていなくても進められますが、どなたが議決権を持つかを先に整理します。
  • 急いで出す必要のある証明書銀行や取引先へ出すものがあれば、その予定をうかがいます。登記の申請中は会社の証明書が出ないので、出す順番を組み立てます。

亡くなった方の役職と、残る人数で変わります

取締役の死亡から登記までの流れ図。ご遺族から死亡届を受け取り、亡くなったのが代表取締役かどうかと、残る取締役の人数で、死亡の登記だけで済むか、後任を選んでからになるかに分かれる
代表取締役が亡くなった会社だけ、新しい代表取締役を選ぶことと、会社の実印の届け出が加わります。
質問に答えてください

死亡の登記だけで済むのか、後任を選んでからか

在任中の取締役が亡くなった場合です。取締役会があるかどうかは、分からなくて構いません。登記簿で司法書士が確かめます。

亡くなったのは、代表取締役ですか

6とおりの答えを、まとめて見る

代表取締役ではない取締役3人以上

死亡の登記だけで終わります

  • 死亡届
  • 委任状

取締役会のある会社でも3人そろっているので、後任を選ばずに申請できます。株主総会も取締役会も開きません。

代表取締役ではない取締役1人か2人

死亡の登記はできます。取締役を補うかどうかを見ます

  • 死亡届
  • 取締役会のある会社は、後任を選ぶ株主総会議事録と株主リスト、その方の就任承諾書
  • 委任状

取締役会のある会社は3人以上と決まっているので、2人では取締役が欠けた状態です。取締役会のない会社なら、そのままで構いません。どちらに当たるかは登記簿で分かります。

代表取締役ではない取締役1人も残らない

取締役を選んでから、まとめて申請します

  • 死亡届
  • 取締役を選ぶ株主総会議事録と株主リスト、その方の就任承諾書
  • 委任状

亡くなった方は、辞めた方と違って取締役としての権利義務を負いません。ですから会社に取締役がいない状態になります。株主総会を開いて選ぶところを、司法書士がご一緒します。

代表取締役3人以上

新しい代表取締役を選び、会社の実印も届け出ます

  • 死亡届
  • 新しい代表取締役を選ぶ議事録(取締役会・取締役の互選・株主総会のどれか)と株主リスト
  • 新しい代表取締役の就任承諾書と印鑑証明書
  • 印鑑届書
  • 委任状

取締役は3人そろっているので、その中から新しい代表取締役を選びます。どうやって選ぶ会社かは定款で決まっているので、司法書士が読んで確かめます。

代表取締役1人か2人

新しい代表取締役を選び、取締役も補います

  • 死亡届
  • 取締役の後任と、新しい代表取締役を選ぶ議事録と株主リスト
  • 新しい代表取締役の就任承諾書と印鑑証明書、後任の取締役の就任承諾書
  • 印鑑届書
  • 委任状

取締役会のある会社は3人以上と決まっているので、新しい代表取締役を選ぶのと同じ総会で、取締役の後任も選びます。取締役会のない会社なら、残った方から代表取締役を決めるだけで構いません。

代表取締役1人も残らない

取締役を選ぶところからご一緒します

  • 死亡届
  • 取締役を選ぶ株主総会議事録と株主リスト、その方の就任承諾書
  • 新しい代表取締役を選ぶ議事録
  • 印鑑届書と、新しい代表取締役の印鑑証明書
  • 委任状

取締役が1人もいない会社では、登記を申請する方もいません。株主総会で取締役を選び、その中から代表取締役を決めてから、まとめて申請します。株主が誰かはっきりしない会社では、残っている書類から確かめるところもお引き受けします。

  • 監査役が亡くなったときも、進め方は同じです。

議事録・株主リスト・就任承諾書・印鑑届書は、こちらで作成します。

代表取締役が亡くなると、その方の名前で届け出ていた会社の実印も使えなくなります。新しい代表取締役が決まったら、その方の名前で印鑑届書を出します。作り方と押していただく印鑑は、こちらでご案内します。

後任が決まらないあいだ、会社の決議に加われるのは残った取締役だけです。取締役会のある会社では、出席できる人数が足りずに決議できなくなることがあります。株主が遠方にいる会社や、お父さまの株式の相続が決まっていない会社では、総会をどう開くかから組み立てます。集まらなくても、株主全員の書面の同意で決められます。

法務局が出している書き方です。押印は要りません。文面はこちらで用意して、お名前を書いていただくだけにします。

最初に、いただきたいもの

ご遺族に何度もお手を煩わせずに済むよう、いまお手元にあるものだけでお送りください。

  • 会社名と本店の所在地登記簿はこちらで取ります。
  • 亡くなった方のお名前と、亡くなった日この日が、死亡の登記の原因年月日になります。
  • 相続のお手続きで取り寄せた書類戸籍や法定相続情報一覧図の写しがあれば、その写しを。あらためて死亡届を書いていただかずに済むことがあります。
  • 株主のこと後任を選ぶ総会で必要になります。お父さまの株式の相続が決まっていなくても構いません。分かる範囲で教えてください。

司法書士から、ひとこと

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

ご遺族から届いた書類が、そのまま登記に使えるかを見ます。足りないところは、司法書士が戸籍を集めます。

代表取締役が亡くなった会社では、新しい代表取締役を選んで届け出るまで、会社の印鑑証明書が出せません。銀行の手続きや取引先への届け出が重なる時期なので、どれを先に出すかをうかがったうえで、申請の日をご提案します。

この件のご相談

この場面で、当事務所ができること

  • 死亡届は文面をこちらで用意し、ご遺族にはお名前を書いていただくだけにします
  • 残った取締役の人数を登記簿と定款で確かめ、後任が要るかどうかをお伝えします
  • 代表取締役が亡くなった会社では、新しい代表取締役の選任と会社の実印の届け出まで一緒に進めます
  • 相続のお手続きで取り寄せた戸籍や法定相続情報一覧図の写しを、そのまま使えるかを見ます
変わったこと・変えたいこと
「役員の任期が切れていた」「本店を移す」など、ひとことで構いません。
その時期
すでに変わった日、またはこれから変える予定の時期。見込みで構いません。
本店のある市区町村
管轄の法務局を確認するためです。会社名は最初のご連絡では不要です。

会社名と本店の所在地、亡くなった方のお名前と日付をお知らせください。何が要るかを確かめて、お返事します。

この件を相談する受付 10:00〜19:00/見積もりは無料です。会社名・個人名は最初のご連絡では不要です。「役員変更・任期」で引き受けることを見る

取締役が亡くなったときの、よくある質問

取締役の地位は、相続人が引き継げますか?

引き継げません。会社と取締役の関係は委任で、亡くなった時点で終わります。ご遺族が会社の株式を相続することはありますが、株主になることと取締役になることは別です。株主として、あらためて取締役に選ぶことはできます。

死亡届は、誰が書くのですか?

ご遺族のお名前で出していただきます。文面はこちらで用意するので、お名前を書いていただくだけです。お辛い時期にお願いすることになるので、戸籍や法定相続情報一覧図の写しがすでにあれば、そちらに替えられます。

亡くなってから何か月もたっています。今からでも登記できますか?

できます。期限を過ぎたことだけで却下されることはありません。相続のお手続きが一段落してからご相談に来られる会社も多いので、気づかれた時点でお声がけください。

父の株式は、どうすればいいですか?

株式は相続の対象なので、遺産分割で引き継ぐ方を決めます。会社の登記とは別のお話です。ただ、後任の取締役を選ぶ総会では議決権が要るので、どなたが行使するかを先に整理します。その整理もお手伝いします。

この記事に出てくる言葉

この記事は、一般的な株式会社(非公開会社)を想定した説明です。必要な書類や手続は、定款の定め・機関の構成・株主の状況によって変わります。実際の手続では、担当する司法書士にご確認ください。