取締役会・監査役をやめる|チャートで分かる、やめたあと誰が代表するか
取締役が2人になり、監査役も空になります
長く取締役をしていた叔父が、高齢を理由に退きたいと言っています。監査役をお願いしていた税理士の先生も、同じころに辞められるそうです。取締役は2人、監査役は空になりますが、後任の当てがありません。どうすればよいでしょうか。
後任を探す前に、取締役会をやめる道があります
取締役会設置会社は、取締役が3人以上いないと置けません(会社法331条5項)。監査役も置かなければなりません(会社法327条2項)。叔父が退くと取締役も監査役も足りなくなります。後任を入れるか、取締役会のほうをやめるかです。
やめる手続きは株主総会ひとつです。定款から取締役会を置く定めと監査役を置く定めを削ると、取締役は1人でもよくなり、監査役も置かなくてよくなります。監査役は定款を変えた日に退任するので(会社法336条4項1号)、辞任届も要りません。
順番だけ気をつけてください。先に叔父の辞任届を受け取ると、総会が終わるまで辞任の登記ができません。取締役が3人に足りないまま辞めると、その方は取締役としての権利と義務を持ち続け、辞任の登記ができないからです(会社法346条1項、権利義務取締役)。同じ総会で取締役会をやめれば、取締役は1人でもよくなります。定款に「取締役は3名以上」と別に書いてあれば、そちらも一緒に削ります。両方そろえば、辞任も同じ申請で登記できます。
代表取締役の選び方も、同じ総会で決めます。定款に書いておかないと、取締役が各自で会社を代表します(会社法349条1項・2項)。そうなると全員の氏名と住所が登記簿に載るので、社長以外の方の自宅も出ることになります。
登記簿の、どこに下線が引かれるか
取締役会と監査役をやめ、叔父の辞任も同じ申請書に入れると、登記簿の4か所に下線が引かれます。株式の譲渡を取締役会が承認すると登記されている会社では、そこも書き換わるので5か所です。
取締役が3人いた会社で、叔父のA野D男が辞任し、監査役のD川E子も退任した場合です。
役員に関する事項
| 資格・氏名(代表取締役は住所も) | 原因年月日 |
|---|---|
| 取締役 A野 B男 | 令和5年6月28日重任 |
| 取締役 A野 C男 | 令和5年6月28日重任 |
| 取締役 A野 D男 | 令和8年10月13日辞任 |
| 埼玉県さいたま市浦和区常盤○丁目○番○号 代表取締役 A野 B男 | 令和5年6月28日重任 |
| 監査役 D川 E子 | 令和8年10月13日退任 |
株式の譲渡制限に関する規定
| 内容 | 原因年月日 |
|---|---|
| 当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない | — |
| 当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない | 令和8年10月13日変更 |
会社の機関に関する事項
| 登記事項 | 原因年月日 |
|---|---|
| 取締役会設置会社 | 令和8年10月13日廃止 |
| 監査役設置会社 | 令和8年10月13日廃止 |
登記簿と定款がそろったら、まずこの5つを当たります。
- 定款に、代表取締役の選び方がどう書かれているか「代表取締役は取締役会の決議で選ぶ」と書いてある会社がほとんどです。取締役会をやめると、この条文は使えなくなります。株主総会で選ぶ、取締役の互選で選ぶ、定款に直接書く。この3つから選びます(会社法349条3項)。
- 監査役の監査の範囲が登記されているか「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある」と登記されている会社があります。登記されていれば、その廃止も同じ申請書に入れます。
- 株式の譲渡を誰が承認すると登記されているか「当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない」と登記されている会社がほとんどです。取締役会をやめると、承認する取締役会がなくなります。代表取締役の選び方と一緒に、承認を株主総会に変える決議をして、登記も書き換えます(会社法139条1項)。
- 定款に、取締役の員数が別に書かれていないか「当会社の取締役は3名以上とする」と、取締役会の条文とは別に書いてある会社があります。取締役会をやめる決議だけでは、この定めが残ります。残ったままだと人数が足りない状態が続くので、同じ総会で一緒に削ります。
- 株主が誰で、何株持っているか定款を変えるので、株主総会の特別決議が要ります。議事録には出席した株主の議決権の数まで書きます。名簿が古ければ、そこから一緒に整えます。
やめたあと、誰が会社を代表するか

| 取締役会があるとき | やめたあと | |
|---|---|---|
| 取締役の人数 | 3人以上 | 1人でも構いません |
| 監査役 | 置かなければなりません | 置かなくて構いません |
| 代表取締役の選び方 | 取締役会の決議 | 定款・取締役の互選・株主総会のどれか |
| 何も書かなかったとき | — | 取締役が各自で会社を代表します |
| 登記簿に載る住所 | 代表取締役の分だけ | 代表取締役を決めなければ、取締役全員の分 |
| 会社のことを決める人 | 取締役会の決議 | 取締役の過半数(会社法348条2項) |
| 株主総会で決められること | 法律と定款で定めたことだけ | 会社に関する一切のこと(会社法295条1項) |
取締役が各自で代表する形にも、よいところはあります。社長が不在でも、もう一人が契約を結べます。ただ、登記簿にはその方の自宅まで載ります。そこを避けるなら、代表取締役を1人に決めます(代表取締役が引っ越した)。
申請書の書き方(取締役会と監査役をやめ、取締役1人が辞任する)
1.登記の事由
取締役会設置会社の定めの廃止
監査役設置会社の定めの廃止
取締役の変更
監査役の変更
株式の譲渡制限に関する規定の変更
1.登記すべき事項
「役員に関する事項」
「資格」取締役
「氏名」A野 D男
「原因年月日」令和○年○月○日辞任
「役員に関する事項」
「資格」監査役
「氏名」D川 E子
「原因年月日」令和○年○月○日退任
「取締役会設置会社に関する事項」
「原因年月日」令和○年○月○日廃止
「監査役設置会社に関する事項」
「原因年月日」令和○年○月○日廃止
「株式の譲渡制限に関する規定」
当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない
「原因年月日」令和○年○月○日変更
1.登録免許税 金7万円
1.添付書類
株主総会議事録 1通
株主リスト 1通
辞任届 1通
委任状 1通
うちの会社はどうなるか、選んで確かめる
いまの取締役の人数と、やめたあとの代表の決め方で変わります。
取締役を3人そろえられますか
6とおりの答えを、まとめて見る
2人以下になる1人に決める
取締役会をやめて、代表取締役を選び直します
- 定款の写し(お手元にあれば)
- 株主の氏名・住所・持ち株数
- 代表取締役を誰にするか
- 代表取締役の選び方(株主総会・互選・定款のどれか)
いまの代表取締役をそのまま選び直せば、代表取締役の登記は変わりません。別の方を選ぶと代表取締役の変更の登記が加わり、その方の印鑑届も出します。
2人以下になる取締役が各自で代表してよい
取締役会をやめるだけで済みます
- 定款の写し(お手元にあれば)
- 株主の氏名・住所・持ち株数
- 取締役全員の住所(全員が登記されます)
代表取締役の選び方を定款から外す決議をします。そのあとは取締役が各自で会社を代表し、全員の氏名と住所が登記簿に載ります。社長以外の方にも、先に一言お伝えください。
2人以下になる決めていない
登記簿の見え方からお伝えします
- 会社の商号と本店
- いまの取締役と監査役の氏名
どちらを選んでも登記はできます。ただ取締役が2人以下になるなら、取締役会は続けられません。
3人そろえられる1人に決める
やめるかどうかは、会社の選びようです
- 定款の写し(お手元にあれば)
- 株主の氏名・住所・持ち株数
- 代表取締役を誰にするか
3人そろうなら取締役会は続けられます。やめると監査役を置かなくてよくなり、重要なことを取締役の過半数で決められるようになります。次の定時株主総会に合わせても構いません。
3人そろえられる取締役が各自で代表してよい
やめると、住所が載る人数が増えます
- 定款の写し(お手元にあれば)
- 株主の氏名・住所・持ち株数
- 取締役全員の住所
3人以上の会社で各自代表にすると、3人分の自宅が登記簿に出ます。取引先が登記事項証明書を取れば見える情報なので、ご本人たちの了解を取ってから決議します。
3人そろえられる決めていない
取締役会を置いたままでも困りません
- 会社の商号と本店
- いまの取締役と監査役の氏名
3人そろっているうちは、置いたままで構いません。監査役だけが空いているなら、そちらを埋めるだけでも済みます。
- 監査役を置く定めだけを外せるのは、取締役会をやめるか、会計参与を置くかしたときです。非公開会社が会計参与を置けば、取締役会を残したまま監査役をやめられます(会社法327条2項ただし書)。
議事録の案は、総会を開く前にお渡しします。
最初に、いただきたいもの
次の3つが分かると早く進みます。あとの2つが分からなくても、商号と本店だけで始められます。
- 会社の商号と本店こちらで登記簿を取り寄せます。取締役会と監査役が、いまどう登記されているかが分かります。
- 定款の写し代表取締役の選び方がどう書いてあるかを見ます。見当たらなければ、そのままご連絡ください。設立のときに認証を受けた公証役場に残っていないか当たります。
- いつの総会で決めたいか辞める方がいるなら、辞任届をいつ受け取るかも合わせます。総会より前に受け取ると、総会が終わるまで辞任の登記ができません。
司法書士から、ひとこと
総会を開く前に、一度ご相談ください。先に辞任届を受け取ってしまうと、取締役会をやめる総会が終わるまで辞任の登記ができません。代表取締役の決め方と株式の譲渡の承認方法まで同じ総会で決めておけば、一度で済みます。
監査役をお願いしていた税理士の先生に、会計参与になっていただく道もあります。会計参与を置けば、取締役会を残したまま監査役だけをやめられます(会社法327条2項ただし書)。取締役が3人そろう会社なら、こちらも選べます。
この場面で、当事務所ができること
- 登記簿を取り寄せて、取締役会と監査役がどう登記されているかをお伝えします
- 定款の代表取締役の条文を見て、やめたあとの選び方の案を作ります
- 株主総会議事録・株主リスト・申請書を作成します
- 変わったこと・変えたいこと
- 「役員の任期が切れていた」「本店を移す」など、ひとことで構いません。
- その時期
- すでに変わった日、またはこれから変える予定の時期。見込みで構いません。
- 本店のある市区町村
- 管轄の法務局を確認するためです。会社名は最初のご連絡では不要です。
ほかの取締役の方にどう説明するかも、一緒に考えます。
この件を相談する受付 10:00〜19:00/見積もりは無料です。会社名・個人名は最初のご連絡では不要です。「役員変更・任期」で引き受けることを見る取締役会・監査役の廃止について、よくある質問
監査役は辞任届を出す必要がありますか?
要りません。監査役を置く旨の定款の定めを廃止すると、その効力が生じた時に任期が満了します(会社法336条4項1号)。登記の原因は「退任」で、添えるのは株主総会議事録と株主リストです。
取締役の任期も切れますか?
切れません。取締役の任期が定款の変更で満了するのは、監査等委員会や指名委員会等を置いたりやめたりしたときと、株式の譲渡制限をなくしたときです(会社法332条7項)。取締役会をやめるだけなら、取締役はそのまま続きます。
取締役会をやめると、何が決めにくくなりますか?
決める人が変わります。取締役会の決議でしていたことは、取締役の過半数で決めます(会社法348条2項)。取締役が1人の会社ではその方が決めます。むしろ広がるのが株主総会の権限で、取締役会のあるうちは法律と定款で定めたことしか決められませんが、やめると会社に関する一切のことを決められます(会社法295条)。会議を開いて議事録を作る手間も減ります。
やめたあと、また取締役会を置けますか?
置けます。株主総会で定款を変えて、取締役会を置く旨を定めます。そのときは取締役を3人以上そろえ、監査役も選びます。登録免許税は、取締役会の分が3万円、監査役設置会社の分が3万円、役員の変更の分が1万円で、合わせて7万円からです。
