変更登記の実務|登記を忘れていた

役員の登記を何年も忘れていた|「重任」ではなく「退任と就任」になる理由

裁判所から過料の通知が届きました。役員の登記を、もう何年もしていません

代表者の自宅あてに、裁判所から過料の通知が届きました。調べてみると、役員の登記を十年以上していませんでした。家族でやっている会社で、役員の顔ぶれはほとんど変わっていません。定款も見当たらず、何から手をつければよいのか分かりません。

いまからでも登記できます。会社がしてきたことが無効になるわけでもありません

任期が切れたあとも、後任が就くまでは、それまでの取締役が取締役としての権利と義務を持ち続けます(権利義務取締役)。その間の契約や決算が無効になるわけではありません。あらためて株主総会で役員を選び、抜けていた分をまとめて登記します。

過料は、通知に書かれた方法で納めます。ただ、納めても登記簿は古いままです。抜けている登記は、別に申請する必要があります。通知がまだ届いていない会社も、することは同じです。

登記を長くしていない会社には、もう一つ、みなし解散の制度があります。最後の登記から12年がたった株式会社は、法務大臣の公告と法務局からの通知のあと、期限までに登記か届出をしないと、解散したものとして登記されます。年数がたっている会社ほど、先に登記を済ませておく意味があります。

司法書士は、まず「いつ任期が切れ、その総会で選び直したか」を見ます

同じ方が続けていても、登記が重任になるとは限りません。重任は、任期が満了したその総会で選び直され、間を空けずに就任した場合の登記です。重任か、退任と就任かは、選べるものではなく、実際に選び直しの決議があったかどうかで決まります。司法書士が次の3点を確かめます。

  • 任期が、いつ満了していたか定款の任期と事業年度の定め、登記簿の前回の就任・重任の日付から数えます。任期は登記簿には載らないので、定款が手がかりになります。
  • その時の定時株主総会で、役員を選び直す決議をしていたか決議があり、議事録が残っていれば、その回ごとの重任を順に登記します。途中の回を飛ばすことはできません。決議をしていなければ、役員は任期の満了で退任しています。退任の日は、これから開く総会の日ではなく、任期が満了した日です。
  • その間に、亡くなった方や、実際には辞めている方がいないか亡くなった役員は、亡くなった日で登記します。退任や辞任とは原因が別なので、分けて扱います。
登記の原因登記簿に入る日付
任期が満了した総会で選び直していた重任その総会の日。回数分を順に登記します。
選び直しをしないまま、年数がたっていた任期満了による退任と、あらためての就任退任は任期が満了した日。就任は、これから開く総会で選ばれ、承諾した日。

よくある事情と、司法書士がすること

この場面で加わること司法書士がすること
定款が見当たらない任期や総会の時期を確かめる手がかりが無くなります。設立のときの事情や、これまでの運営をうかがい、いまの定款を書面に起こします。日付をさかのぼらせたり、決議していない任期の延長を書き込んだりはしません。
亡くなった役員がいる亡くなったことと、その日付が分かる書類(戸籍など)が加わります。登記に使える書類を確かめ、取り寄せが要るものは委任を受けて司法書士が取ります。その方が株主でもあった場合は、株式を誰が引き継いだかもうかがいます。
同じ役員を、あらためて選び直す株主総会議事録、株主リスト、就任承諾書(役員変更登記の必要書類)。同じ役職に選び直す場合は、新しく入る役員に求められる本人確認の書類は、原則として要りません。議事録と株主リストの文案をつくります。法務局から追加を求められた場合に備えて、用意しておくとよい書類もご案内します。
この機会に、取締役会や監査役をやめたい名前だけの役員が残っている会社では、いまの人数に合った形に直せます。定款の変更と、株式の譲渡制限の定めの変更が加わります。役員の登記とまとめて申請できる形に、議案の順番を組みます(役員の変更と任期)。
みなし解散の通知も届いている通知に書かれた期限までに、登記を申請するか、事業を廃止していない旨の届出をします。期限から逆算して段取りを組みます。届出だけでは、抜けている役員の登記は残るので、登記まで進めます。

退任と就任がいくつ並んでも、役員の変更の登記は1件の申請にまとまります。

最初に、いただきたいもの

分かるものだけで足ります。見当たらないものは、空欄のままで構いません。

  • 届いた通知書過料の通知でも、法務局からの通知でも、写真で構いません。期限のあるものかどうかを司法書士が見ます。
  • 会社名と本店の所在地登記簿は司法書士が取ります。
  • 定款や、過去の総会の議事録あるものだけで足ります。
  • いまの役員と、この間にあったこと実際に経営にあたっている方、亡くなった方、もう関わっていない方。おおよその時期と一緒に、分かる範囲で。
  • 株主と持株数株主名簿が無ければ、どなたがどれくらい持っているかの見当で構いません。

司法書士から、ひとこと

執筆・監修者の小野田敦士

小野田 敦士

  • 司法書士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引士

小さな会社では、定款も議事録も本当に出てこないことがあります。それでも登記はできます。残っているものと、うかがったお話から、こちらで組み立てます。

この件のご相談

この場面で、当事務所ができること

  • 登記簿と定款から、いつ任期が切れ、どの登記が抜けているかを洗い出します
  • 選び直しの株主総会の議事録、就任承諾書、株主リストをつくります
  • 定款が見当たらない会社では、いまの定款を書面に起こします
  • みなし解散の公告や通知の時期を見ながら、申請の段取りを組みます
変わったこと・変えたいこと
「役員の任期が切れていた」「本店を移す」など、ひとことで構いません。
その時期
すでに変わった日、またはこれから変える予定の時期。見込みで構いません。
本店のある市区町村
管轄の法務局を確認するためです。会社名は最初のご連絡では不要です。

届いた通知書の写真と、会社名・本店の所在地をお送りください。登記簿はこちらで取り、いま必要な登記を洗い出してお返事します。

この件を相談する受付 10:00〜19:00/見積もりは無料です。会社名・個人名は最初のご連絡では不要です。登記を忘れていた」で引き受けることを見る

役員の登記を忘れていたときの、よくある質問

任期が切れていた間の契約や決算は、無効になりますか?

なりません。任期が切れたあとも、後任が就くまでは、それまでの取締役が取締役としての権利と義務を持ち続けると会社法が定めています。

過料を納めれば、登記もされたことになりますか?

なりません。過料は、登記が遅れたことに対して代表者個人に科されるもので、登記簿の内容は変わりません。抜けている登記は、別に申請します。

過去の日付で総会を開いたことにして、重任で登記できませんか?

できません。実際に決議をしていなければ、重任にはなりません。事実と違う議事録をつくることは、お引き受けしていません。任期の満了による退任と、あらためての就任として、そのまま登記します。

登記をすると、また過料の通知が来ますか?

来ることがあります。過料を科すかどうか、金額をいくらにするかは裁判所が決めるので、司法書士からお約束はできません。申請の前に、その見通しも含めてお話しします。

この記事に出てくる言葉

この記事は、一般的な株式会社(非公開会社)を想定した説明です。必要な書類や手続は、定款の定め・機関の構成・株主の状況によって変わります。実際の手続では、担当する司法書士にご確認ください。